広島高等裁判所 昭和44年(う)199号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕所論は、原判示第一の罪は、原判決が累犯加重の原因となる前科として掲げた罪との間に累犯の関係がないのに、右第一の罪につき累犯加重をした原判決は、法律の適用を誤つた違法がある、というのである。
記録を調査するに、原判決は「被告人は昭和三七年七月一三日山口地方裁判所柳井支部で強盗、窃盗罪により懲役七年に処せられ、当時右刑の執行をうけ終つたものである」と判示し、昭和四四年三月一四日午後二時頃犯した原判示第一の罪、ならびに、同日以後に犯した同判示第二ないし第四の各罪について、いずれも累犯加重の処遇をしているのである。
ところで、被告人に対する前示前科の懲役刑の執行終了の時期について、原判文上からは詳かでないが、その採証にかかる原審公判廷における被告人の供述、ならびに、被告人に対する前科照会回答書の記載によると、右前科の懲役刑は昭和三七年七月二八日確定し、その刑期満了前の昭和四四年一月九日仮出獄、同年三月一四日午後一二時の経過とともに右刑期が満了したことが認められ、これによれば、原判示第一の罪は、右前科の懲役刑の仮出獄期間中の犯行であるとともに、その刑期最終日における犯行であるから、累犯の要件である「刑の執行を終りたる」に該らず、これに対し累犯加重をなすことは許されないものといわねばならない。もつとも、累犯の要件である「刑の執行を終りたる日より五年内」とあるその起算日を刑期の最終日と解すれば(大審院大正五年(わ)第二二一〇号、同年一一月八日刑事三部判決)、第一の罪は刑期の最終日である昭和四四年三月一四日の犯行であるから、刑の執行を終りたる日より五年内に犯した累犯に該当することとなるが、刑法五六条の累犯加重の規定が設けられた趣意は、五年を経過しない間に刑の執行の威力を忘却したということを刑加重の精神とするものと解られるから、未だ刑の執行中の時日である刑期の最終日を刑の執行を終りたる日として、右五年の期間内に算入することは不合理であつて、前記起算日は刑期の最終日の翌日であると解するのが相当である(広島高等昭和四一年(う)第一三三号、同年八月一六日判決、高集一九巻五号五四三頁参照)。そうすると、原審が、前刑の執行最終日に犯した判示第一の罪について累犯加重の処遇をしたことは、法令の解釈適用を誤つた違法があるというべきであるが、本件にあつては、原判示第一の罪を除くその余の各罪につき、前示前科の罪といずれも累犯の関係にあり、これに対し累犯加重の処遇をなすべき案件であるから、原判決の処断刑になんら変るところはなく、右の違法は判決に影響を及ぼさないから、破棄の理由とはならない。論旨は結局理由がない。(高橋英明 浅野芳朗 丸山明)